銅線盗難多発で対策新法が成立 被害品の流通防止目的
2025/06/13 (金曜日)
深刻化する太陽光発電施設の銅線ケーブルなどの盗難を防ぐための対策を定めた金属盗対策法が13日、参院本会議で可決、成立した。被害品の流通を防ぐことが目的で、盗難品と知りながら買い受ける悪質な業者への対策が盛り込まれた。
2025年6月13日、太陽光発電施設をはじめとする銅線ケーブルなどの金属盗難が多発している現状を受け、「金属盗対策法」が参院本会議で可決、成立しました。新法は盗難被害品の流通防止を目的とし、銅をはじめとする金属くずを買い取る業者に対し、都道府県公安委員会への営業届出、売り手の本人確認、取引記録の作成・保存、盗難品の疑いがある場合の警察への通報を義務付けます。公布から3カ月以内に一部規定が施行され、1年以内に全規定が実施される見込みです 。
警察庁の統計によると、令和5年(2023年)の金属盗認知件数は16,276件に達し、統計開始の令和2年(2020年)の5,478件から約3倍に増加しました。その被害総額は約132億8,700万円に上り、窃盗全体の約2割を占めています。材質別では銅が約97億7,900万円(全体の約7割)を占め、品目別では金属ケーブルが約109億8,100万円(約8割)を占めました 。
銅価格の高騰が盗難増加の最大要因です。コロナ禍による鉱山生産の停滞とリモートワーク普及による電子機器需要の急増、さらには脱炭素化やウクライナ情勢に伴う資源制裁などで、近年の銅価格は右肩上がりで上昇しています。その結果、産業インフラの中でも山間部や無人地帯にある太陽光発電施設の地上配管(銅線ケーブル)が犯行の標的となり、深夜の短時間犯行で大量に持ち去られるケースが後を絶ちません 。
2024年1月から11月までに、太陽光発電所での銅ケーブル盗難は6,742件を数え、146人が摘発されました。被害を受けた施設では発電停止による電力ロスや修繕費用が膨大となり、地域の再生可能エネルギー推進計画にも深刻な打撃を与えています。養鶏場や鉄道の架線からも銅線が狙われるなど、インフラ全体の安全性が脅かされています 。
違反業者には公安委員会による営業停止命令(6カ月以内)や罰則(50万円以下の罰金など)が科されます 。
従来、都道府県や市区町村が条例で金属買い取り業者の規制を行ってきましたが、条例未整備地域の「抜け穴」や都度改正の煩雑さが課題でした。有識者検討会は「全国一律の法律による対応が抜本策」と結論づけ、新法制定に至りました 。
英国は2013年に「スクラップ・メタル・ディーラー法(Scrap Metal Dealers Act)」を施行し、業者登録制や身分証明義務、支払手段制限(現金払い禁止)を導入しました。導入後、金属盗件数が約半減し、適切な取引管理が犯罪抑止に貢献したとの評価があります。一方、中国では重要インフラ近接地帯の監視強化や買い取り業者への政府統制が進められており、国際的にも規制強化の流れが見られます。
銅線盗難は社会インフラや再生可能エネルギーの普及を阻む深刻な犯罪です。「金属盗対策法」の成立により、被害品の流通防止や買い取り業者の適正化が一歩進むことになります。しかし、法施行後も厳格な運用と地域ぐるみの防犯対策がなければ、再発抑止には不十分と言えます。行政・警察・産業界が連携し、インフラの安全と資源循環型社会の確立を目指す取り組みが今後さらに重要となります。
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