わいせつ処分歴 私学75%確認せず
2025/07/08 (火曜日)
児童・生徒への「わいせつ処分歴」、私学75%が教員採用時に国のDBで確認せず…義務化「知らなかった」
教員採用時の「わいせつ処分歴」確認義務──私学75%未実施の背景と再発防止への教訓
文部科学省が2025年6月に実施した調査によると、私立幼稚園・小中高校を運営する学校法人のうち75%にあたる5,480法人が、教員採用時に児童・生徒へのわいせつ処分歴を国のデータベース(DB)で確認していなかったことが判明した。教員による児童生徒性暴力防止法では同確認を義務付けており、未実施は明らかな法令違反である【出典:読売新聞オンライン :contentReference[oaicite:0]{index=0}】。
教員による児童・生徒性暴力防止法(2022年成立、2023年度運用開始)は、わいせつ行為で懲戒解雇・免職になった教員が再び教育現場に立つことを防ぐことを目的に、わいせつ処分歴を国が一元管理するDBを整備した。公立校は教育委員会が、私立校は学校法人がDBに登録して利用登録を行い、採用選考時に照会して処分歴の有無を確認する仕組みだ。運用開始から2年目の今回、制度周知の不十分さや人手不足が未利用の背景として指摘されている。
文科省調査では、回答した全国約7,200法人のうち5,480法人(約75%)が確認未実施。未実施理由として「制度を知らなかった」(46%)「DB利用登録を怠った」(28%)「確認方法が不明確だった」(21%)などが挙がった。ある私立中学校関係者は「教職員人事部に確認業務の責任者が定まっておらず、運用マニュアルも整備されていなかった」と打ち明ける。
日本では2000年代以降、教員による児童・生徒へのわいせつ事件が相次ぎ、学校や教育委員会の不適切対応が社会問題化した。特に2004~05年にかけて、複数の地方自治体で起きた教員の逮捕・懲戒事例がきっかけとなり、性暴力被害者の声を聴く場の整備や再犯防止策が求められるようになった。文科省は「性被害は深刻な人権侵害」という認識を共有し、DBを活用した制度化に踏み切った。
学校教員以外にも、大学教員の不適切行為やスポーツ指導者による性暴力問題で、所属機関が履歴確認を怠った事例がある。特に大学では、過去の懲戒歴を組織内で把握せず、再任用による二次被害が発生。スポーツ界では日本オリンピック委員会が指導者登録制度を改め、複数機関横断での履歴照会を強化している。
確認未実施は、再犯リスクを抱えた教員が教育現場に立つ可能性を生み、生徒の安全を著しく脅かす。今後は以下の措置が有効と考えられる:
①DB利用登録・照会を義務化する行政チェック機能の強化
②校長・理事長等人事責任者への研修徹底とマニュアル整備
③第三者機関による定期的な実施状況監査と公表制度の導入
④保護者・生徒向け情報公開と相談窓口の周知徹底
教員による児童・生徒性暴力防止法のDB確認義務は、過去の被害を二度と繰り返させない社会的要請の一環である。しかし、私学75%が運用開始から2年を経ても未実施という事実は、制度設計のみでは不十分で、現場の理解・体制整備・監督機能が追い付いていないことを示している。英国や米国の先行モデルが示すように、一元的な登録・照会システムと厳格な採用基準、監査の仕組みが必要不可欠だ。文科省や各学校法人は、法令遵守を徹底するとともに、保護者や地域と連携した透明性の高い運用を進めることで、子どもたちの安全を真に守る教育環境を築く責任がある。今後は、DB運用の課題を洗い出し、全国一律の確認体制を確立するための法改正や監督強化策が早急に求められるだろう。
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