田中希実 陸上1500mで史上初V6
2025/07/06 (日曜日)
【陸上】田中希実が1500mで史上初6連覇も「『おぉー』とはならない」世界陸上は2種目内定
田中希実が1500mで史上初6連覇も「『おぉー』とはならない」──日本選手権の女王が示す新たな時代
2025年7月6日、東京・国立競技場で行われた日本選手権女子1500メートル決勝で、田中希実(25=ニューバランス)が4分04秒16で優勝し、国内大会史上初となる大会6連覇を達成した。5000メートルとの2種目制覇は4年連続で実現し、9月の世界陸上東京大会の代表に1500m・5000mの2種目で内定した。【出典:日刊スポーツ、スポーツ報知】
従来の1500m大会連覇記録は、吉川美香(06~10年)の5連覇。田中は4日の5000mで4連覇を飾った勢いのまま、1500mでも後続を完璧に抑え込んだ。今や日本の中・長距離界を牽引する存在として、もはや驚きよりも期待に応え続ける“絶対女王”像が定着している。
レース後、田中は「6連覇は自分でも特別とは感じない」と冷静に語った。国内記録(3分59秒19)保持者の重圧や、5000m制覇から中2日での連戦を戦い抜いた体力管理の巧みさ。順当に勝ち続けることで、周囲の“驚き”を超えた安心感を与えている。
福島県出身の田中は中学時代に頭角を現し、高校では全国大会で金メダルを連取。2019年の東京五輪予選では1500m日本記録を更新し、以後日本選手権の優勝常連となった。大学(早大)卒業後も留学や海外レースを重ね、経験値と精神力を磨いた。
日本選手権は1913年に第1回大会が開催され、戦前・戦後を通じて国内トップ選手が集う伝統の舞台。女子1500mは1980年に追加された種目で、当初は3分台ランナー不在だったが、21世紀に入り黄金世代が台頭。田中の連覇は“第3世代”の完成を象徴する。
前人未到の5連覇を果たした吉川美香は、現役時代に世界ランキングトップ10入りも果たし、日本の中距離界を牽引した先駆者。田中は吉川を超える6連覇を果たしたが、吉川が国内外で戦った時代の環境と、今のグローバル化・ハイテクトレーニングの恩恵を受ける今の時代をそれぞれ体現している。
世界陸上は9月、東京・国立競技場で開催。田中は1500mと5000mの2種目出場で金メダル獲得を狙う。過去の日本勢では中東풍の厳しい気候とハイレベルな記録競争に苦戦してきたが、自国開催の追い風と、自身の安定感は強みとなる。
2種目同時優勝(ダブル)は女子5000mで4連覇中の成功例があるが、5000mと1500mを4年連続で制した選手は日本史上初。中・長距離の二刀流を同時に極める難しさは、全選手に共通の憧れであり、田中の実現は新時代の指標となった。
田中の安定感を受け、若手選手の台頭も進む。18歳以下のU20陣営では5000m・1500mともに3分台到達を目指す選手が育成中。国内レベルの底上げが進み、五輪・世界選手権での日本人決勝常連化が現実味を帯びている。
田中と同期の大迫傑は米国ナイキ・オレゴンプロジェクトで活躍後、マラソン転向。延床大学の山本亮太は箱根駅伝で区間新記録を連発し、現在は5000mで東京五輪代表を狙う。日本の中長距離選手はトラックに留まらず、記録と実践の幅を広げている。
世界ではエチオピア、ケニア勢の名前が轟く中、セイエド・ハッサンやヒサブ・ケゲラなどの連覇記録も注目に値するが、6連覇という国内大会での継続優勝は世界的にも稀。米国選手権では多くの種目で10年連続優勝が過去にあるが、日本の1500m連覇は特異な偉業と言える。
レース直後、SNSでは「また田中かよ」「驚きよりも安心感」といったツイートが飛び交った。一方で地元福島では「次は世界で初優勝を」と期待が高まり、メディアも「絶対女王の次の目標」を大きく報じている。
田中を指導する植松聡コーチは「メンタル面の強化が優勝の鍵」と語る。栄養士、理学療法士、スポーツサイエンティストらが一丸となり、緻密なトレーニングプランと回復プログラムを構築。現代陸上の総合サポート体制の成功例として注目される。
ニューバランスとナイキの二刀流契約を結ぶ中で、資金面と装備面の両立を実現。国際大会への遠征費や専属ドクター、専用トレーニング施設の使用権など、スポンサーからの手厚いバックアップが成長を後押ししている。
世界大会でのメダル獲得は最大の目標だが、ケガのリスク管理や大会間隔の調整が課題。来年のパリ五輪では1500m決勝進出、5000m入賞を狙う。二種目をこなす体力とスピードの両立がカギとなる。
田中希実の1500m6連覇は、日本選手権の歴史に新たな1ページを刻んだ偉業である。しかし、その快挙が「驚き」ではなく「当然」と受け止められるほど、彼女が与え続ける安心感と信頼感は、むしろ次なる高みへの強い期待を喚起する。9月の世界陸上東京大会で二種目に挑む田中の走りは、日本の陸上界だけでなく、国内スポーツ界全体にとっての試金石となる。世界の強豪たちを迎え撃つその舞台で、女王は再び「おぉー」と言わせる走りを見せることができるだろうか。今後の挑戦から目が離せない。
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