「賞味期限切れ」の水 捨てないで
2025/06/10 (火曜日)
井出留美ジャーナリスト・博士(栄養学)・office3.11代表6/10(火) 5:52ペットボトルの水(写真:イメージマート)6月5日は国連の定めた「環境の日」。6月は環境月間ということで、ラジオ局J-Waveの番組「JUST A LITTLE LOVIN’」に出演し、水をテーマにお話しした。
6月5日は国連の定めた「環境の日」。6月は環境月間ということで、ラジオ局J-Waveの番組「JUST A LITTLE LOVIN’」に出演し、水をテーマにお話しした。
多くの人が誤解していると感じるのが、ペットボトル入りの水に印字されている期限のことだ。
厳密には、この期限は「賞味期限」(おいしさのめやす)ではない。
日本で製造されるペットボトル入りのミネラルウォーターは、ろ過・殺菌されているので、適切な場所で保管されていれば、期限が過ぎていても飲める場合が多い。
では、「賞味期限」ではなく、何の期限なのか。
6月5日は国連が定めた「世界環境デー(環境の日)」で、日本では6月を「環境月間」としています。各地で環境保全やリサイクルの重要性を啓発するイベントが開かれる中、ラジオ局J-Waveの番組「JUST A LITTLE LOVIN’」に出演し、私が「水」をテーマにお話しした際、リスナーの皆さんから最も多く寄せられた疑問が「ペットボトル入りの水に印字されている“期限”って何?」というものでした。
日本の食品表示基準では、飲料に「賞味期限(おいしさの目安)」を表示することが義務づけられています。しかしペットボトル入りのミネラルウォーターは、原水の選定→ろ過→加熱殺菌→ボトリングという工程を経るため、微生物が繁殖しにくく賞味期限を厳守しなくても飲用上は安全なケースがほとんどです。
では、なぜ「賞味期限」を記載しているのか。実は、多くのメーカーでは「賞味期限」ではなく「未開封状態で品質が変わらずに飲める期間」を示すため、製造年月日から1年後の日付をラベルに印字しています。これは法律上「賞味期限」と同じ扱いとなりますが、品質に大きな劣化が見られない水でも表示義務を満たすための措置として定着しています。
食品表示には大きく分けて以下の2種類の期限があります。
一般的な加工食品や生鮮品には「消費期限」が併記されることもありますが、ミネラルウォーターには賞味期限のみが定められています。
一部のメーカーでは、消費者の「いつ作られたか」がわかるよう、賞味期限の代わりに「製造年月日」だけを印字するケースも増えています。メリットとしては:
一方で、消費者側にとっては製造日からの経過日数がわかりにくく、古い在庫管理を招きやすいというデメリットもあります。
欧州連合(EU)では飲料にも賞味期限表示が義務ですが、国やメーカーによっては「最適飲用期限(Best before)」や「ボトリング日(Bottled on)」を用いることが多く、日本と同様に期限を過ぎても品質は維持される旨を注記しています。米国では「ボトリング日(Bottled on)」や「売り切り日(Sell by)」を表示し、消費者や小売店に最新の製品を流通させる運用が定着しています。
ミネラルウォーターは製造後、直射日光を避ける常温保存が基本です。繰り返し冷蔵庫に出し入れすると結露によるラベル剥がれやフタ周りの汚れを招くため、開封前は「涼しく暗所」で管理するのが理想的です。開封後は雑菌混入が懸念されるため、2~3日以内に飲み切ることが推奨されます。
環境月間のテーマである「水」にまつわる課題は、表示だけではありません。使い捨てペットボトルによるプラスチックごみの増加は深刻で、国内ではPETボトルの回収・リサイクル率は約90%と高いものの、回収されたボトルの一部はダウングレード(再び高品質ボトルには戻らない)されるケースがあります。サーマルリサイクル(熱回収)やマテリアルリサイクル(化学的再資源化)の推進、マイボトル利用やウォーターサーバーの併用が、今後ますます重要になります。
消費者としては、以下の点を意識するとよいでしょう:
ペットボトル入りのミネラルウォーターに印字された「期限」はあくまで「おいしさの目安」であり、賞味期限を過ぎたからといってすぐに飲めなくなるものではありません。製造年月日や賞味期限の表示方法を理解した上で、適切な保管と早めの消費、さらにはマイボトル利用やリサイクル推進など、環境負荷を抑えた「賢い水との付き合い方」を実践しましょう。
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