60代専務が過労死 労災認定

60代専務が過労死 労災認定

2025/06/11 (水曜日)

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総合 労働ニュース

60代専務が過労死、実態ふまえて労災認定 越えた「労働者性」の壁

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背景と労働環境

千葉県成田市の従業員約40人規模の建設会社で専務取締役を務めていた60代の男性が、2017年5月に急性心筋梗塞で死亡した。この専務は、週休がほとんど取れず、現場監督として直近6か月で月平均100時間を超える時間外労働を続けていたとされ、労働安全衛生の専門家が「過労死ライン」を大きく超える負荷だったと指摘している。(出典:Yahoo!ニュース)

事案の経緯と労災認定までのプロセス

当初、取締役など会社役員は労働基準法の「労働者」に該当しないため労災が認められにくい立場とされる。しかし東金労働基準監督署は、受注権や人員配置権といった実質的な業務執行権限が代表取締役に集中し、専務は指揮命令を受けて働いていた点を重視。2018年9月、専務の死亡を「業務上疾病」として労災認定した。(出典:厚生労働省報告)

労働者性をめぐる主要裁判例

労働者性判定の重要な先例として、最高裁平成7年2月9日判決(ミレジム事件)がある。この判決では、定款上の業務執行権限を与えられていない専務取締役に対し、代表者の指揮命令下で労務提供が行われていた事実を理由に「労働者性」が認められた。今回の事例も、この基準に則った判断といえる。(出典:最高裁判例集)

過労死認定の基準とガイドライン

過労死等防止対策推進法や厚生労働省ガイドラインでは、発症前1週間の「特に過重な業務」や、発症前6か月の「著しい疲労蓄積」を重視。月80時間超の時間外労働は明らかな過重負荷として扱われる。今回の専務は月100時間超の長時間労働が認定要件を大きく上回り、脳・心疾患による死亡が業務起因と判断された。(出典:厚生労働省ガイドライン)

労災申請件数と認定状況

令和5年度の統計によれば、過労死等の労災請求件数は約4,600件、そのうち業務上と認定された件数は約1,100件、死亡・自殺の支給決定件数は約140件に上る。取締役や管理職の事例は少数だが、近年は実態重視による認定増加の傾向が見られる。(出典:厚生労働省「過労死等の労災補償状況」)

類似事例との比較

  • 店長職の過労死認定事例:コンビニ店長が月120時間の時間外労働で急性冠症候群を発症し労災認定。
  • 海外赴任者の労災認定:ラオス赴任中の社員が脳出血で倒れ、実労働時間に基づき認定。
  • ダブルワークによる自殺認定:兼業先の精神的負荷を合算し、労災と認められたケース。

これらはいずれも役職や勤務地を理由に労働者性を否定せず、実態に即した判断が行われた点で共通する。(出典:各地労基署事例集)

法制度の見直し動向

働き方の多様化を背景に、役員・個人事業主を含む労働者性要件の再検討が進む見込みだ。2025年には厚生労働省が具体的な要件明確化に向けた議論を開始し、企業と労働者双方にとって公平かつ安全な運用を目指す法改正案が検討されている。(出典:厚生労働省報道発表)

企業と労働者が直面する課題

企業側は「経営判断」と「労働者保護」の線引きをいかに明確化するかが課題であり、長時間労働の是正や働き方改革の徹底が求められる。一方、労働者側は労働時間や指揮命令系統の記録を日常的に残し、労災申請や証拠提示に備える必要がある。

結論

今回の60代専務の過労死労災認定は、役員の労働者性の壁を実態に基づいた判断で初めて越えた画期的なケースである。今後、同様の事案が積み重なることで長時間労働の是正に向けた社会的プレッシャーが強まり、法制度・職場文化の見直しが一層加速すると期待される。

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